JSA

        新ガイドライン関連法の強行採決に抗議し
        平和な日本と世界の実現への共同を呼びかける決議
                    
 去る5月24日、新ガイドライン関連法案は自民、自由、公明三党の賛成により国会を通過した。国会における論議は、日毎に増す国民や自治体の反対や疑問を無視し、ひたすら採決を強行したものであり、断じて許すことのできない暴挙である。われわれは、この強行採決に対し怒りをもって抗議するものである。
 この法律はどのように詭弁を弄しようとも、国際紛争を解決する手段としての武力の行使を永久に放棄した日本国憲法第9条に違反し、さらにまた日本国の領域に武力攻撃があった際に行動するとした日米安保条約第5条にすら違反するものである。これはまさに戦後の日本の進路を大転換させるものであり、日本を戦争をしない国から戦争をする国へと変質させるものといって過言ではない。しかもその戦争は米軍の軍事行動への支援と協力行動であり、先制攻撃や核兵器使用を肯定する立場に日本がまきこまれることを意味し、国際的には日本が再び侵略国の立場に立ち、さらには核加害国ともなりかねない危険すらある。アジア諸国がこの新たな状況を危惧するのも当然である。
 一方、NATO(北大西洋条約機構)は、4月24日にワシントンで首脳会議を開き新しい戦略概念を決定した。この内容を見ると、日米安保条約の新ガイドラインとまったく軌を一にするものと言える。例えば、NATOの条約でもその第5条ではNATO加盟国が攻撃を受けた際に共同で対決することになっているが、新戦略概念では┌非5条危機対応作戦を行うこともありうる" として、NATO以外の周辺への介入を公然と掲げている。しかも国連安保理の決定がなくとも、NATO自身の手続きで行動することを宣言し、このことと今日のバルカン半島での危機対応作戦の決定が関連することも公言しているのである。日本の国会で、米国が国連決議無しに行う戦争への支援の是非に政府が明言を避けたことも同じ脈絡の上にあると考えなければならない。
 このように見ると、いま米国は欧州・大西洋ではNATOの変質と強化により、またアジア・太平洋では日米安保条約の変質と強化により、地球全体の支配に従来以上の執念を持ちはじめていると見るのが妥当であろう。それはまさに国連より上に米国の権威を打ち立てようとする覇権主義の論理であり、世界に危険な状況を生み出しかねないものである。その姿勢が今日のユーゴへの非戦闘施設を含めた空爆にも現れている。しかも日本政府が国連憲章無視のこの暴挙にまで協賛し、小渕首相にいたっては、5月上旬の訪米の際にNATO首脳会議についで日米首脳が会談したことを最大の成果のごとく評価しているのである。
 21世紀を目前にして、われわれは日本と世界でこのような危険な動きのあることを憂慮せざるを得ない。これはソ連崩壊後の世界の安全と平和にとって最大の危機と言えよう。日本科学者会議は1965年の創立以来、一貫して日本と世界の平和の実現のために大きな努力を払ってきた。科学や技術の進歩は戦争のためではなく、平和と生活向上のために利用されなければならない。20世紀は、核兵器に象徴されるように、飛躍的発展を遂げた科学と技術が戦争に奉仕させられたことを想起し、改めて今日の危険な情勢を訴え、真に平和な21世紀の実現のために世界の諸国民が共同して立ち上がることを呼びかけるものである。

 1999年5月30日
                        日本科学者会議第33回定期大会


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