大 会 宣 言
日本科学者会議第33回定期大会は、20世紀から21世紀にまたがる時期の運動の在り方を討議しました。
20世紀は、民主主義・平和主義の発展、植民地主義の崩壊などで特徴づけられる反面、戦争、核兵器の製造と使用、歯止めのない市場原理の導入、地球環境の悪化、人間性の破壊などの負の遺産を残そうとしています。日本科学者会議第33回定期大会は、これらの負の側面を正し、前進面を受け継ぎ、21世紀を豊かで、戦争のない世紀とするため、当面、次の諸点について活動を強めることを決定しました。
1.大学審議会答申の具体化および国立研・国立大学等の独立行政法人化を推し進める諸施策が強行されています。これらの施策の遂行により、行き過ぎた競争原理・効率主義を通じて、大企業のための研究の重視、基礎科学および国民生活に密着した科学・技術の軽視、大学・国立研における民主的運営の破壊がもたらされることは明らかです。教育の面でも、「中高一貫」教育・学習科目の過度の選択制の導入・大学の種別化など、弱肉強食・優勝劣敗型社会をめざす流れの中で、総合的人間教育の実施がきわめて困難な状況が生まれています。
日本科学者会議は、科学・技術のバランスのとれた発展、大学・国立研における民主的運営を強める運動に取り組むとともに、教養教育・高等教育の充実に努め、小・中・高校の教員・父母と連帯して、総合的人間教育の実現をめざします。
2.新ガイドラインは、米国の権益を求めて行われる戦争にわが国が全面的に協力するためのものです。これは、自国が武力攻撃を受けなくても、戦争に参加するという点で、憲法に反するだけでなく、現行日米安保条約からも逸脱するものです。わが国が、再び侵略国になる危険をもはらんでいるのです。国民の悲願である核兵器廃絶についても、日本政府は、この願いに背を向けた行動をとり続けています。国連安保理の決議なしに行われている、米国を中心とするNATO軍によるユーゴスラビア空爆に、理解を示している政府の姿勢も許すことはできません。TMD(戦域ミサイル防衛構想)の予算化も、その背景に軍事力による解決の思想の存在があり、黙過できないことです。
日本科学者会議は、世界の平和を実現するため、新ガイドラインなど、戦争につらなるすべての動きに反対するとともに、日米安保条約と核兵器の廃絶をめざす運動を強めます。
3.地球温暖化、酸性雨などをはじめとして、相次ぐ開発行政にともなう自然破壊・文化遺産の破壊など、緊急に解決を要する環境面の課題が山積しています。一方、諸科学の細分化の進行は科学者・技術者に社会とのかかわりの中で自己の研究の位置づけを見え難くさせ、人類生存にとって危険な物質・技術を生み出すおそれを増大させています。このような事態は、総合的科学の確立、科学者・技術者の社会的責任の自覚の強まりの中でこそ克服が可能です。総合的科学の建設、科学者・技術者の社会的責任の強調は、まさに日本科学者会議設立の中心理念の一つでもあります。
日本科学者会議は、今後とも、科学者・技術者の社会的責任を重視し、科学の総合化に努めるとともに、その発展を基礎に、環境悪化や災害から国民を守る運動に積極的に参加し、それを支援します。
日本科学者会議は、国民のみなさんとともに、これらの運動を粘り強く推進していく決意を、今大会の名において表明するものです。
1999年5月30日
日本科学者会議第33回定期大会
戻る