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騒音新環境基準の施行の中止と再検討を求める声明 (1999年2月17日)

環境庁は、騒音に関する環境基準の改定を98年9月30日に告示し、本年4月1日の施行にむけて、都道府県段階で地域類型指定の見直しが行われている。
本改定は、中央環境審議会に対する諮問が「騒音の評価手法等の在り方について」であったことからも理解されるように、騒音の評価法として従来の中央値(L50)から国際的に定着した等価騒音(LAeq)に変更し、「評価方法の変更に伴い」環境基準値を再検討するものであり、環境基準の緩和を目的としたものではなかった。
しかしながら、告示された内容は、国道43号線道路公害裁判最高裁判決(95年7月)が違法と認めた受忍限度65dB(敷地)、60dB(道路端より20m以内)を超える、上限が昼間一律70、夜間65dBというきわめて緩い指針値を導入するなど、「人の健康を保護し生活環境を保全するうえで維持されることが望ましい基準すなわち目標値である」とされる環境基準の考え方を大きく逸脱するものとなっている。
さらに、幹線道路に面する地域の「幹線交通をになう道路に近接する空間」という特例では、屋内での基準値を導入し、室内基準によってもよいとしたことは屋外を原則にする基準の考え方を大きく変え、屋外での環境悪化を歯止めなく容認するもので、他の環境基準にも波及する恐れのある重大な改悪と言わざるをえない。また「幹線道路」として、従来は「都市の主要な骨格を成す道路」とされていたものを、4車線以上の市町村道まで含めたことは、沿道騒音公害の面的拡大を容認するものである。
最近明らかにされた中央環境審議会騒音振動部会での審議議事録等の報道(朝日新聞99年2月4日等)によれば、「厳しい基準だと道路が作れない」とする建設省側委員の主張に屈し、強く反対する委員の主張を抑える形で押し切り、答申をまとめたもので、とうてい科学的な検討を踏まえたものといいがたいものである。
答申では達成時期についても、既設道路においては現行の「5年以内を目途として」から、「10年を目途として達成」と延長、「幹線交通を担う道路で達成が著しく困難なもの」においては、現行「5年を超える期間で可及的速やかに」から「10年を超えて可及的速やかに」と2倍に延長された。
これらの告示の内容は、最高裁判決を無視し、深刻な道路騒音に苦しめられる沿道住民の願いを踏みにじるもので、断じて認めることのできないものである。
また、とくに静穏を必要とする療養施設、社会福祉施設、文教施設等の施設が集合して設置されている類型として位置づけられた類型AAについては、AA地域指定を求める重症心身障害児施設の父母や教職員の声に耳を傾けず、「すでにAA地域の基準値を超えている」「道路計画が予定されている」などの理由からAA地域指定に難色を示す滋賀県のように、騒音環境基準の考え方の変質がさまざまな形で悪影響を及ぼしている。
日本科学者会議公害環境問題研究委員会は、今回の騒音環境基準の改定が、人の健康を軽視した車優先社会にいっそうの拍車をかけ、被害を拡大することにつながることから、直ちに新環境基準の施行を中止し、人の健康と生活環境を保全する立場から抜本的に見直すことを強く求めるものである。
   日本科学者会議公害環境問題研究委員会



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