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最近の教員養成政策に関する見解



1998年5月31日  日本科学者会議幹事会


 

 われわれは、今日の深刻な教育の現実を国の将来にかかわる重大事態と認識し、その解決のため、戦後教員養成の理念として定着している「開放制」や「大学における教員養成」の原則に基づき、その改善・改革をすすめるべきであると考える。教員養成政策の要諦は、教員養成現場における努力を支援し、創意や能力を引き出すため、大学の自治や自主性を尊重し、諸条件を整備することである。これに対し、最近の教員養成政策は、大学現場の意向を無視したトップダウンの制度改変やリストラであり、多くの問題点を指摘せざるをえない。さしあたり以下の通り見解を表明する。

1.教育職員免許法改正法案について

 (1)開放制教員養成の急速な縮小が危惧される。 
 法案によれば、中学校教員免許状について、教育実習を含む教職科目の単位数が大幅増加となる(一種免許状の場合、19→31単位)。それは一般大学・学部の教員養成の現状とかけ離れ、免許状取得を著しく困難にし、開放制教員養成を相次ぎ廃止させ、教員を広い学術の分野から隔絶した環境で養成するという致命的な障害をもたらすであろう。
 (2)教員の教科専門教養、ひいては児童生徒の学力低下が懸念される。 法案によれば、総じて教科の単位数は半分以下となる(中学校教員1種免許状の場合、40→20単位)。それは教員の教科専門教養、ひいては児童生徒の学力の全般的低下をまねき、学校における学ぶ魅力の喪失を助長することになろう。
 (3)教員養成の充実や創意工夫のため、国家規制の緩和と条件整備が必要である。 教員養成・免許に関する法令による国家規制の緩和、そのスタッフの充実、教員採用の増加などの条件整備こそ、政府が果たすべき基本的責務である。

2.国立教員養成大学・学部定員5000人削減計画について

 (1)教員養成の機能を低下させる。 無定見な学部改組の強要、教員の新課程や他学部への振り替えなど教員養成規模の縮小、教員の負担増、教員養成目的の希薄化などにより、教員養成機能の全般的低下は避けられない。
 (2)数年後に予測される教員の大量需要に対応できない。 数年後、児童生徒数の増加、教員の大量退職等に伴う教員需要急増が確実に予測されるが、この計画が実施されれば、改正免許法のもとでの一般大学・学部の教員志望者の急減とあいまって深刻な教員不足が生ずる。
 (3)計画を即時中止し、学級規模・教職員定数の大幅改善をはかるべきである。 本計画は「財政構造改革」の一環であり、その見直しの機運のもとで即時中止されるべきである。それにかえ、「30人学級」をめざし、教職員定数や教員採用人数を増やすならば、過密な学級、教職員の慢性的多忙、若い教員の不足、年齢構成のアンバランスなどが解消し、ゆきとどいた教育の実現、教職就職率の上昇と平準化などの諸課題が一挙に解決する。この方策への転換をわれわれは強く要望する。

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