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 行政改革会議最終報告について(事務局長談話)

 行政改革会議は,12月3日,最終報告をとりまとめ公表しました.国民が求める行政改革の目的が,「財・政・官」の癒着による利権志向的な行財政を,国民を中心に据えた民主・公正・効率の行財政に変えることにあることは,言うまでもないことです.しかし,最終報告では,内閣官房,内閣府,総務省などの設立にみられるように,内閣権限の強化がはかられ,公共事業費の8割を仕切る巨大利権官庁である国土交通省が出現する一方,国民の生活奉仕部門の縮小の方向を示す労働福祉省構想など,国民生活向上とは無緑な組織いじりのみが目立ちます.
 わたしたちに関連の深い科学・技術分野に限っでみても,わが国の科学・技術の発展を大きく阻害するような提起がいくつかなされています.第一は,総合科学技術会議の設置です.報告によると,現在の科学技術会議の権限をさらに拡大し,大学における研究までも「総合戦略」の名のもとに,統制しうるものとなっています.このことは,現在でも,開発研究にシフトしている予算の流れが,さらに強められることを意味します.すぐに利益を生み出さないような基礎的な研究,国民生活や環境に関連する諸研究は,ますます軽視されるおそれがあります.第には,国立試験研究機間の独立行蚊法人化です.この措置も,研究の近視眼的な効率化を強め,科学・技術の発展に大さなアンパランスをもたらすものです.「機能に応じた改組,転換」とともに,独立行政法人化を「一つの選択肢]と明記されている国立大学についても同様な機具を感じざるを得ません.第三は,日本学術会議にかかわる間題です.現在の日本学術会議は,公選制の廃止,低額な予算など,いくつもの弱点・困難をかかえてはいますが,内閣総理大臣の所轄のもとにおかれ,わが国の科学,技術の発展に貴任をもつ「特別な機関」として機能しています.ところが,最終報告によると日本学術会議は,当面総務省に存置するが,今後そのあり方は,総合科学技術会議で検討されるとなっています.わが国の科学者・技術者を代表する日本学術会議が,単なる行政機閉の一部として位置づけられる危険性があるのです.このことは,わが国の科学・技術の今後の発展にはかり知れないマイナスの影響をもたらすことは明らかです.以上の点をふまえて,科学の自主的民主的総合的発展をめざす立場から,行政改革会議の最終報告の内容に反対します.
      1997年12月12日 日本科学者会議事務局長 岩田 進午