1997年12月12日
日本科学者会議
12月3日の行政改革会議最終報告は、「行政機能の減量」の目玉として「独立行政 法人」の創設を提言し、具体的検討対象として、54の研究所・試験場等を明記し(この 外に、農薬検査所等10の検査検定機関の独立行政法人化や、家畜改良センター等作業施 設の民営化などを併せて明記している)、特殊法人研究機関を含めた統廃合を提言した。 日本科学者会議は、科学の自主的民主的発展、研究条件向上と研究体制民主化などを 目指す立場から、国立試験研究機関の独立行政法人化に反対の立場を表明し、今後、政 府がその具体化を行わないこと、さらに、財政構造改革の名のもとに進めようとしてい る国立試験研究機関の統廃合計画策定を直ちにやめ、整備と充実を行うことを求めるも のである。 独立行政法人とは、主務大臣の提示した目標に従って作成され、認可を受けた中期目 標(3〜5年)と毎年度の業務計画に沿い、効率優先で目標達成する運営の実現を図る ために設けられるものであり、総務省と監督省の委員会が行う評価結果を、人事や予算 配分、組織の存廃に直ちに反映させる仕組みである。さらに最終報告は、研究機関につ いて、可能な限り省庁を超えて統廃合を進め、複数機関を括って法人とすることを求め ている。 このような組織形態が、日本国民と世界の人々の豊かで安全な生活のために、自由な 発想で研究を進めることが期待されている国立の試験研究機関になじまないことは明白 である。 労働組合など国立試験研究機関に働く当事者の意見を聞くことなく押しつけられよう としている独立行政法人化には次のような問題がある。 プロジェクト中心の産学官「融合」の研究機関に変質し、既に導入されている任期 付任用の拡大や派遣労働者化と相まって、研究者の使い捨てが進む。 監督省と評価機関による監視と管理が日常的に強化され、会計処理や人事管理に対 する干渉と硬直化が今以上に厳しくなる。 基礎的基盤的な研究費が厳しく抑制され、研究者の独創性が生かせず、全く新しい 原理に基づくブレークスルーが生まれる条件がなくなる。 環境・安全・防災技術など、国が国民に対して責任を持つべき研究が、商品化・産 業化に役立たないものとして冷遇されることになる。 独立行政法人化によって、国立試験研究機関は、国民全体の奉仕者としての組織から、 産業界の高々数年規模の長さを展望した技術開発競争の場に変質するであろう。 なお、ほぼすべての国立試験研究機関が「独立行政法人化等の検討対象」に明記され たのと対照的に、最大級規模の研究機関である防衛庁技術研究本部(5研究所、定員90 0人以上)は対象から除かれている。防衛庁の「準省」への格上げと連動して、日本の 科学・技術の軍事化につながるものとして懸念せざるを得ない。 独立行政法人の創設作業は、政府に委ねられている。独立行政法人の設立には「基本 法」と個別法人の設立根拠法の制定が必要であり、主幹官庁や評価機関、組織の存続期 限などに関する規定も設けられるであろう。 1998年と1999年春の国会に上程されると 見込まれる法案を軸にして、いよいよ独立行政法人具体化を巡るたたかいが本格的段階 を迎えることとなる。 日本科学者会議は、国立試験研究機関の研究者等はもちろん、行政改革会議が大幅な 「改革」と「合理化」を求め、独立行政法人化も「選択肢の一つ」としている大学の教 員・研究者、さらには科学・技術の健全な発展を望む技術者・国民諸階層とともに、た たかいの輪を広げるために奮闘する決意をここに表明する。
戻る トップへ戻る