JSA

 参議院本会議での「大学の教員等の任期に関する法律案」の裁決強行に講議する
     1997年6月6日 大学教員・研究者への任期制導入の法制化に反対する全国連絡会議

 本日,参議院本会議は,「大学の教員等の任期に関する法律案」の採決を強行した.全国連絡会議は,この暴挙に強く抗議する.法案は,昨年10月の大学審議会答申「大学教員の任期制について」を受け,国・公・私立の大学・短期大学の教員に,あらかじめ仕期をつけた雇用制度を導人し,「当該期問の満了により退職」(第2条)とするものである.したがって,再任は新規採用に外ならず,新現採用と同じ手続きをふみ,候補者間の競争に打ち勝ったときのみ達成される.しかも,間題なのは,衆・参両文教委員会の審議を通じて明らかにされたように,感情的理由によって再任を拒否された場合でさえも,「救済措置」はもちろん「異議申し立て」の権利さえ保障されていない.にもかかわらず,両文教委員会では,このような人権無視について,なんらの対策も討議されていない.
 多くの識者が指摘するように,任期制の導人は「再任」を意識することにより,研究上の「悪しき業績主義」の助長,独創的研究の芽生えの阻害,高等教育の荒廃をもたらすなど,わが国の学問研究と教育に重大な障害を生み出す.複数の参考人からこの点が強調されたのに,文部省は,この点について回答を一切行っていない.
 任期制の導人は,「一年以上の有期限雇用」を禁じた労働基準法の実質的改悪であり,今国会の焦点の一つとなっている「女子保護規定の撤廃」などとともに,労働法制の全面的改悪の一翼を担うものである.文教委員会でも,ここに「重大な間題がある」との指摘が,委員およぴ参考人からなされたが,この点についての客議も全くなされていない.
 大学教員は,低賃金,研究予算の不足,定員の削滅など,きわめて困難な状況のもとで,研究・教育の活性化に努力してきた.さらなる活性化をかちとるために最も必要なことは,これらの研究・教育条件の改善である.すべての参考人から,研究・教育条件改善の重要性が述べられていたが,文部省は,この点についても明確な回答を行っていない.このように,委員会において必要不可欠な審議がなされないまま,日本共産党以外のすべての委員の賛成によって委員会採決が強行され,本日,参議院本会議で,日本共産党,新社会党,二院クラブ島袋議員が反対したが,賛成多数で法案が可決された.大学関係者はもとより,国民の間にも,任期制導入に反対する声が日毎に高まってきている.大学教員・研究者への任期制導人の法制化に反対する全国連絡会議は,大学関係者はもちろんのこと,さらに多くの国民と共同し,各大学において,任期制の導入を実現させないため,全力をあげて活動をすすめることをあらためて表明するものである.