「大学の教員等の任期に関する法律案」およぴ「一般職の任期付研究員の採用,給与及ぴ勤務時間の特例に関する法律案」の強行採決に抗議し,両法案の即時廃案を求める決議
多くの大学教員・研究者,関係労働組合等の強い反対にもかかわらず,国公私立すべての大学教員に対する「任期制」の法制化を図るため,政府・文部省により「大学の教員等の任期に関する法律案」が国会に上程され,衆議院文教委員会で5月21日採決が強行され,翌22日本会議で可決された.さらに科学技術基本法・科学技術基本計画路線により導入された国立試験研究機関の研究公務員に対する任期付任用制度の法制化を図るため,「一般職の任期付研究貝の採用,給与及び勤務時間の特例に関する法律案」が上程され,衆議院内閣委員会で5月22日採決が強行され,翌23日本会議で可決された.審議不十分のまま,異例のスピードでの採決で,まさに「翼賛国会」そのものの強行採決である.われわれはこの暴挙に強く抗議する.
財政危機を口実とする反動的政策の一環として,その法制化を強行しつつある大学教員・研究者への「任期制」は,憲法に保障された学問の自由とその制度的保障としての大学の自治を侵害するおそれが極めて強い.ユネスコで近く採択が予定されている「高等教育職員の地位に関する勧告案」には,終身在職権は学問の自由の擁護に対する手続き的保障である,と述べられており,大学教員に対する「任期制」の導人・法制化は国際的な流れに逆行するものである.
このような「任期制」の導入・法制化によって,研究における「悪しき業績主義」がはびこり教育軽視の傾向を生むことをおそれる.日本の科学・技術が創造性を失い,その発展が著しく阻害されることを深く懸念する.さらに,この「任期制」は大学教員・研究者の人事管理にとどまらず,短期契約労働者の雇用増加傾向に拍車をかけ,わが国の労働環境における雇用慣行を大きく崩すことにもなりかねない.われわれは,この「任期制」の導入・法制化を決して認めることはできない.両法案の即時廃案を求めるものである.
今日,大学教員・研究者のみならず国民全体に対する攻撃は極めて厳しいものがあるが,われわれは国民との連帯を一層強め,国民のための科学・技術の創造と,大学づくりを推進するとともに,来るべき21世紀を平和と科学の時代にするために奮闘することをここに表明する.
1997年5月25日 日本科学者会議第32回定期大会