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 日本全土の沖縄化を目指す実弾砲撃演習場移転計画に反対する声明

 昨年12月21日,「神縄米軍基地の整埋・統合・縮小問題に関する日米特別行動委員会(SACO)」は最終報告を提出し,日米安全保障協議委員会はこれを了承した.そこでは,普天間飛行場の「代替へリポート」の海上設置など,在沖米軍基地・演習場の県内移転・新設とともに,米海兵隊による(キャンプ・ハンセンでの県道越え)実弾砲撃演習を沖縄以外の5カ所の自衛隊演習場に移転する計画を1997年度中に実施することが決められている.しかし,これらはどれをとっても地元住民をはじめ国民の同意を得ずに強引に決定されたものであり,断じて認められるものではない.
 北海道,宮城,山梨,静岡,大分のそれぞれの移転先の住民が,こぞって米海兵隊の演習受け人れに反対していることは当然である.日本政府は,地元の演習受け入れ拒否を住民エゴのように描き,「苦労の分かち合い」を強調し,さまざまな手段を講じて押しつけようとしている.しかし,他国への侵略を主任務とする海兵隊の駐留は,日米安保条約をもってしても根拠づけることはできないものである.また,演習に用いられている155ミリ榴弾砲は,実戦では中性子弾頭を発射する核兵器であって,核兵器廃絶を切望する被爆国日本には相容れないものである.したがってこの種の「苦労」は分かち合うどころか拒否することこそ,正しい判断といわねばならない.さらに演習の国内移転は,沖縄県民の基地移設・たらい回し反対,海兵隊撤退の要求にも対立するものである.
 今日,日米安保条約は,日本の安全に役立つどころか,アメリカの世界戦略に日本を一層深く軍事的に組み込むことによって,わが国を世界各地の紛争の当時者に巻き込む危険を強めている.今回の日米安全保障協議委員会の共同発表においても「二国間の,地域的な及び地球的な規模での安全保障面における両国の貢献を増進する方策を明らかにするものである」と述べている.今や在日米軍は,明らかにアメリカの国家利益・世界戦略のために駐留し,演習を行っているのであり,これを日本の平和になくてはならない苦労を誰が担うかとの問題にすりかえる余地はない.いまこそ,わが国はこの危険から脱却して,日本国憲法の平和的民主的原則に則った外交・内政へと転換するべきである.日本政府は,日本全上から米軍実弾演習場の排除・米国海兵隊の本国撤退・日米地位協定の全面改定を要求し,さらには国民世論に基づいて米軍基地全体の撤去・日米軍事同盟の解消を推進するべきである.
 平和と民主主義を求める科学者は,日本全土が基地のない自然豊かな地として発展し,平和な産業や地域社会が発展することを望むものである.日本科学者会議は,日本政府が今回の「最終報告」を撤回し,あらためて住民の声を全面的に反映した平和の道を選択するよう,強く要求する.
    1997年1月25日
                        日本科学者会議