JSA

世界科学者連盟第17回総会
 「核兵器完全廃絶」に関する決議


 去る7月9日,意見が全く二分した国際司法裁判所は,国家そのものの存立が問われる自衛以外の核兵器の使用または脅威は,一般的には国際法に矛盾しているという判断を示した.また,1994年国連総会が諮問した「核兵器の脅威または使用の国際法上の是非」の答申として,裁判所は一票差において,日本への最初の原爆投下を,外交政策の問題にしようとする背景をなしてきた係争中の議論に対してはなんら判断を示さず,その代わり,「裁判所は国際法の今日的な状況に鑑み,国の存立が問われるような極端な場合の白衛においては,核兵器の脅威または使用の合・違法を明確に判断することはできない」とした.これらの判断は,世界の、平和と民主主義を擁護しようとする人々によって大さな批判を浴びることになった.
 裁判所の判断は,「核抑止力政策」のみに拘泥する米国や他の核兵器保有国の強い影響を受けたものである.しかし,この裁判所の判断にも拘わらず,聴聞会の議論は核兵器廃絶の意見が圧倒的であった.オーストラリアは,核兵器はその性質上,人類の基本的原則に照らして,慣習国際法下においても違反しており,従って,核兵器の使用または使用の脅威のみならず,核兵器の入手,開発,実験,保有の全てが違法であると主張した.メキシコは核兵器が破壊的結果をもたらすことは明らかであるとし,さらに,インドネシアは核兵器はそれが自衛のためであるとしても,その脅威と使用は違法であるとした.
 国連総会は毎年核兵器使用に反対する決議をあげているが,日本政府はそれらに対して1961年以外は反対または保留をしてきた.原爆を投下された国としてはそのような態度はとるべきではない.しかし,原爆を投下された当の広島と長崎両市長は,国際司法裁判所の聴聞会において国民の声を代表して,国々に甚大な影響をもたらす核兵器の使用は違法であることを強く主張した.
 世界科学者連盟第17回総会において,われわれは世界の全ての科学者が核兵器の完全廃絶に向けて奮闘することを呼びかける.市民と協力したわれわれの運動は世界の力の均衡を変え,歴史の発展を支援する決定的な力になることを確信する.
                     (1996年9月20日)