沖縄「代理署名」裁判における最高裁の不当判決に抗議する
周知のように,沖縄県の太田昌秀知事は,米軍基地用地の強制使用手続きの一環である「代埋署名」を命じた高裁判決を不当として,最高裁判所に上告していた.ところが,去る8月28日,最高裁は,沖縄県の訴えをことごとくしりぞける判決を下した.日本科学者会議はこの判決に強く抗議するものである.
この裁判では,世界にも例を見ない過密な米軍基地の存在によって沖縄県民が最低限の生活さえ脅かされるという状況,県民の人権,平和的生存権,財産権の侵害が日常的に行なわれてきた状況を,最高裁がどう裁くかという,実質的審理が求められていたはずである.ところが,最高裁は,沖縄戦以来51年にもなるのになお存続する米軍基地の存在とそれに伴う沖縄県民の憲法上の諸権利の剥奪,日米地位協定やさらには日米安保条約による憲法の蹂躙をなんら審理することなく,形式的な議論によって,沖縄県民の願いを一蹴した.これは,連立与党による現政府の圧力に屈し,「憲法の番人」である最高裁の役割を自ら放棄したものにほかならない.
日本政府は,安保優先,米軍基地用地の強制使用の継続・固定化を日指し,県民の私有地の不法占拠を続けている.そして,これは今後増大する一方である。政府は,ただちに不法占拠をやめ、軍事基地の抜本的整理・縮小,地位協定の見直しを行い、さらには撤廃,日米安保条約の廃棄に向かって進むべきである。政府も最高裁も,国民本位の政治、司法をおこなうべきである.
この問題は,米軍の基地や演習地を沖縄県の内部で,また全国で再配分するなどの小手先の手段によって解決されるような性格のものではないし、沖縄県民も決してそれを望んでいない.さしあたり,基地そのものの整理縮小が間題なのである.9月8日には,「日米地位協定の見直しと県内の米軍基地の整理縮小」の賛否を問う県民投票がおこなわれる.日本科学者会議は,この県民投票が,投票率,賛成率ともに成功することを期待するとともに,太田知事はじめ県内各自治体が今後も引き続き,基地のない平和な沖縄をつくるため県民とともに奮闘されることを支持し、連帯を表明するものである.
1996年9月3日
日本科学者会議