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神奈川県立外語短期大学教授会に対し,大学自治の正道に立ち戻り,同大学専任講師金■幸■氏の分限免職処分の再考を求めるアピール

 私たちは憲法が定める学問の自由を制度的に保障する大学の自治の原則に照らし,神奈川県立外語短期大学教授会が金■幸■氏に対して行った分限免職処分の議決に,大さな関心と危惧の念を寄せるものであります.同議決に基づいて昨年4月5日,神奈川県教育委員会は金■幸■氏に対する分限免職を決定しました.
 この件についての神奈川県人事委員会および横浜地方裁判所などにおける審理などから知り得た事実から判断して,同大学教授会が金■氏を分限免職とした議決には,教育と研究に携わる者として見逃すことの出来ない問題点がいくつかあります.
 それらのうちで,私たちが第一に指摘しておきたい点は,教授会におけるこのような議決手続きが,大学自治の実質的な法規である教育公務員特例法(第6条)に抵触していることです.第二には,本件処分が大学教員の分限免職であるにもかかわらず,本人の大学教員としての教育と研究に関する業績評価が無視されている点です.
 大学自治はもともと大学が高度な学術の教育と研究を担うという使命を社会から付託されていることに伴う権利であります.この権利の悪用・乱用は大学に対する社会的信頼の失墜につながることは明らかです.私たちに求められていることは自己の研究の意義と目的の自覚であり,「学問の自由を擁護し,研究における創意を尊重する」(科学者憲章1977年4月日本学術会議)ことです.
 本件処分に関しては,すでに神奈川県人事委員会および横浜地方裁判所という法的権限のある機関で審理中ですが,これらの機関において神奈川県立外語短期大学教授会の議決が不当であるとの裁定,あるいは判決が出された場合,それは同時に県立外語短期大学における大学の自治能力の欠如という評価が公的に認定されることになりかねません.
 今日の神奈川県立外語短期大学の自治は重大な事態に直面しています.その解決のためには,なによりも外語短期大学教授会が大学自治の正道に立ら戻り,自らの手で問題を解決することです.すなわち,今回の議決の経過と結果を見直し,全■幸■氏の処分を撤回することが出来れば,もはや外部のいかなる機関もこれに介入することは出来ないでしょう.
 私たちは神奈川県立外語短期大学が,真の大学自治が確立した大学として教育・研究の実を挙げ,すぐれた卒業生を世に送り出すことを心から願い,同大学の学長はじめ教授会が,それを成し遂げるであろうことを期待するものであります.
1996年5月26日
                日本科学者会議第31回定期大会