JSA

<声明>
  フランスの核実験再開に抗議し,いまこそ核兵器の全面禁止・廃絶を

 フランスのシラク大続領は,6月13日,訪米と先進国首脳会議(ハリファクス・サミット)ヘの出席を前にした記者会見において,ミッテラン前大続領が1992年4月に中止を決定し停止してきた核実験を今年9月に再開,来年5月までに8回行なうと言明した.しかも,実験の場所はフランスを遠く離れた南大平洋にあるフランス統治下のムルロア環礁である.現地をとりまく国々をはじめ世界中で抗議の声があがり,また反対の行動が起こっている.核爆弾が,広島・長崎に投下されて半世紀を迎えた.原爆は熱線,爆風に加えて放射線によって,大量の市民をこの世の地獄に突き落としただけでなく,その被害は50年後の今日にいたるまで披爆者に苦しみを与え続けている.さらに,核兵器保有国が核兵器開発にあたって世界各地で行ってきた核実験によって,多数の住民の生命を奪い生活を破壌し続けてきた.今日,核兵器の脅威により戦争を抑止するという考え方が破産していることは明白になっている.それにもかかわらず,核兵器保有に固執し,新たな核兵器開発のための実験を行なうことは,科学・技術の成果を非人道的兵器に利用することを禁止し,国際紛争を平和的手段によって解決しようという,人類社会の基本的発展方向に背を向けるものである.
 今年5月核保有国は,包括的核実験禁止条約を来年中にまとめることをひきかえに,核兵器の永久保有を目的とした核兵器不拡散条約の無期限延長を強行した.その暴挙のために,唯一の被爆国であるわが国の村山社会党委員長を首班とする連立内閣が積極的な役割を演じたことは記憶に新しい.そしてフランスによる核実験再開は,その包括的核実験禁止条約締結後も新型核兵器をコンピューターで設計できるように,入力データを今のうちに取得しておこうという意図からなされるものであり,核兵器の新たな開発と永久保有に固執する姿勢をあらわにしたものである.よしんばフランスが,すでにコンピューターシミュレーションによる実験データを揃えているアメリカと同じ条件になるためという言い訳をしたにせよ,それは何ら正当性をもつものではない.またコンピューター実験ならば構わないとする考えそのものも,科学・技術の反人類的利用といわねばならない.
 さらに核兵器は,使用時の壊滅的な環境破壊にとどまらず,開発,製造,実験など,どの側面をとっても環境破壊につながっている.まさに核兵器の存在そのものが最大の自然破壊につながり,その中で生活する人間と社会を,物質的にも精神的にも破壊するものである.
 日本科学者会議は,フランスの中国に続く核実験再開に強く抗議するとともに,同国が核兵器の全面禁止・廃絶への道を歩むよう要求する.また,日本政府にたいしては,「核兵器の究極的廃絶」という事実上の核兵器容認政策を改め,見せ掛けの「実験反村」決議の国会提出ではなく,広島,長崎の原爆被害の実態を世界の国々に広く伝え,早急に核兵器の廃絶と核兵器全面禁止のための国際条約の実現をめざして,イニシアティヴを発揮するよう要求するものである.
1995年7月29日
                  日 本 科 学 者 会 議