「阪神大震災」にあたって
日本科学者会議事務局長 河井 智 康
去る1月17日未明に近畿地方を襲った 「兵庫県南部地震」は,神戸市を中心に戦後最大の被害をもたらし.「阪神大震災」 と呼ばれるほどの大事となりました.不幸にして亡くなられた方々に慎んで哀悼の童 を表するとともに,数々の被災にあわれた方々に,心からお見舞いを申し上げます. 本会の兵庫支部会員の状況についても現在調査中ですが,幸い人命に関わる情報はま だありませんが,各家庭での被害や大学・研究所の損壊など,かなり大きな被災状況 のようです.一日も早く回復が行われるよう,本会としてもその救援に協力したいと 思います.
今回の地震は,大都市を直撃した直下型地震であったため に,その被害が予想以上に甚大になったといわれています.たしかに今日の地震予知 技術は未だ十分ではなく,また大地震に耐えるとされた建造物も倒壊するなど,技術 的な再検討が必要なこともかなりあると思います.しかし,今回の地震が「高度経済 成長期」に大成長した神戸市のような近代的大都市で起こった大災害だということに 注目する必要があります.高層ピルが林立し,高速道路・新幹線・地下鉄が走り,臨 海部の埋め立て地には近代施設が建ち並ぶといった,まさに世界に誇ってきた日本の 都市建殷が,一瞬の内に崩壊してしまったのです.
「高度経済成長」は,日本列島に多くの公害をもたらし, 地球環境の破壊にもつながっていますが,今回はこのような大災害をもたらしてしま いました.いま,日本にはこれと同じような大都市がたくさんあります.また,今で も同じ発想による都市開発が進んでいます.今回の大災害は,まさに日本の進路を根 本から問い直しているのではないでしょうか.
本会は今回の災害から何を教訓とするかを,専門をふまえ 総合的視野から早急に調査・検討し,科学者としての提言をしていきたいと考えま す.