「阪神大震災」に関する声明

 1月17日に発生した兵庫県南部地震は,「阪神大震災」と呼ばれ,戦後最大の災害をもたらした.5千名をこえる亡くなられた方々におくやみ申し上げるとともに,数十万の被災された方々に心からのお見舞いを申し上げる.日本科学者会議は,1日も早く災害復興が行われるよう被災地の方々とともに努力するものである.

 今回の地震は大都市を襲った直下型地震であったが,古い木造家屋の大量倒壊・火災とともに,高層建築物,高速道路,新幹線高架など近代的都市建造物が次々と破壊され,ガス・水道・電気も止まり都市機能を殆ど麻痺させるほどの大災害となった.このことは,現在日本中に存在する大都市も,いつ同様の被害にあうかわからないという危険と隣り合わせであることを物語っている.これはまさに,日本の歴代政府が進めてきたわが国の国土開発政策そのものが問われていることを示している.すなわち,「高度経済成長政策」を典型とした経済効率最優先の方策がもたらした最悪の事態と言わざるを得ない.この大きな犠牲を伴った大震災を敦訓として,日本の国土開発のあり方を根本から見直すよう求めるものである.

 また今回の大災害は,わが国の科学・技術の破行的発展の帰結であるという点も見逃すことができない.そもそも地震国日本をどのように発展させるのが最も合理的であるかを,環境や経済・文化を含め総合的に研究することが必要であったが,ひたすら経済効率優先の巨大開発とそれに奉仕する建設技術に重点が置かれた結果の大災害と言わねばならない.それは今日のわが国の科学・技術政策が実利偏重であることの反映に外ならない.すなわち,大地震が起こった事自体は天災であるが,これほどの大災害をもたらした事は,まぎれもなく「人災」である.わが国の科学・技術のバランスのとれた総合的発展をこの機に改めて求めるものである.

 日本科学者会議は,創立以来30年間,科学の総合的発展をめざし,様々な分野の科学者と地域住民の協力のもとに調査・研究を行い,地震災害を警告し,災害対策を提言し,国や地域の政策に反映させるよう努力してきた.今回の震災に対してもすでに調査・研究活動を開始している.日本科学者会議は,必要な緊急対策の提言を行うとともに,より根本的には安全で住みよい国土づくりを,今後とも国民とともに実現していく決意を表明するものである.

                      1995年1月31日

                      日本科学者会議