大会宜言

 

 日本科学者会議第29回定期大会は,第28回定期大会で採択された方針に基づいて活動を振り返り,今後一年間の実りある活動を目指し,1994年5月28日・29日の両日,法政大学(東京)において開催された.

 今日,環境・公害問題をはじめとする社会問題,平和と民主主義の課題,研究条件の劣悪化や科学者の権利問題など,多くの取り組むべき課題が山積し,そしてまた,社会の急激な変動のもとで学問白体も新たな方法の模索を迫られている.白然・社会現象の複雑化に伴う学問の学際的発展が求められる一方,研究・教育体制と社会の現実は大きな矛盾を抱えている.このような学問と研究・教育をとりまく環境の大きな変化のなかで,日本科学者会議は1995年に創立30眉年を迎える.この節目にたって,日本科学者会議はその社会的役割を果たすために,会員を多く迎え入れ,時代の激動に対応する活動の発展を期して今大会を開催した.

 今大会は,支部活動に基づく活発な論議と経験の交流を通じて,次のような成果を収めた.第一に,大学改革やCOE(中核的研究拠点)に代表される研究・教育体制の再編が,戦後政治の大きな変動の中でかつてなく進行していることが明らかにされた.第二に,若者の科学離れや意識変化のなかで,日本科学者会議が新しい感覚とスタイルで活動を進めるための知恵を出し合った.第三に,日本科学者会議創立30周年を記念すべく第10回総合学術研究集会,市民講座,国際シンポジウムなど多彩な取り組みの積極的な推進を確認した.このような意思の一致を踏まえ,今大会は日本科学者会議の更なる発展に向かう新たな礎を築くことになった.

 諸科学領域を包括する研究者組織として,日本科学者会議がその独白の役割を発揮することがますます求められており,また市民から寄せられる期待も大きい.日本科学者会議は,発足の理念とこれまでの蓄積を踏まえ,日本の科学の発展に向けて新しい飛躍を目指すことを,今大会の名において宣言する.

                      1994年5月29日

                      日本科学者会議第29回定期大会