日本国憲法の民主主義の原則に反する小選挙区制・公費政党助成に反対する声明
細川内閣は,|政治改革」の名の下に,小選挙区比囮代表並立制と政党への公費助成制度を年内に実現しようとしている.しかしこれらは日本の将来にとって大きな危険をもたらすものと考えられ,われわれは強く反対する.
そもそも議会制民主主義は,その議員構成が国民の意向を正しく反映していることを前提に成り立つものであり,大量の死票が出る小選挙区制の導入は,たとえ比例代表部分を加味しても,日本国憲法が掲げる国民主権と民主主義の原則に反するものである.また同時に,少数意見を制度的に抹消しようとすることがいかに世界の平和と進歩にとって危険であるかは,治安維持法等の苦い経験をもつ日本人にとって忘れることのできないものであり,絶対にくり返してはならないことである.
また新内閣は,政党への助成として多額の公費を計上する一方,企業・団体からの政治献金禁止という国民の願いを当面棚上げにする方針を示した.しかし,今回の「政治改革」の出発点が金権腐敗の政治構造の一掃であったことを考えるならば,選挙権もない企業・団体からの献金は禁止し,個々人の自由意思によらない公費の政党助成は提案すべきでない.
われわれは,こうした憲法の精神に反した「政治改革」ではなく,金権腐敗政治の一掃にむけた企業・団体献金の禁止と現行選挙制度の定数是正を軸とした改革こそが重要であると考え,細川内閣にその実行を強く求める.
1993年9月10日
日本科学者会譜