小選挙区制導入と憲法改悪に反対し科学者の社会的責任を果たそう
1947年の日本国憲法制定以来,今日ほどその憲法が危機に曝されている時はない.湾岸戦争を機に,政府自民党はアメリカ政府の圧力に乗じて,一部野党をとりこみつつ自衛隊の海外派兵を強行した.さらに彼らはこの明らかな解釈改憲にあきたらず,明文改憲の道を画策しつつある.
自民党の金権腐敗の体質が,東京佐川急便事件や金丸・生原巨額脱税事件によって露呈し,国民の憤激をかった.政府自民党はそれを逆手にとり,「政治改革」と称しつつ,小選挙区制導入にすり替えるとともに,多くの野党を抱き込んでその成立を急いでいる.この事態はマスコミをまきこんだ新たな翼賛体制を危惧させるものがある.
自民党が小選挙区制の成立に固執するのは,衆議院で3分の2の多数を獲得し,憲法の改悪を意図しているからである.今日における憲法問題の発端は,湾岸戦争を機に日本の国際貢献のあり方として,経済的支援だけではなく軍事的貢献をもせよというアメリカ政府の圧力を日本の反動支配層が利用したものである.このことは,彼らが戦力たる軍隊の保持と国際紛争解決の手段としての武力行使とを禁じている憲法をこころよしとしないからである.日本国憲法前文および第9条は,人類普遍の原則を表現しており,真の国際貢献とは,この理念を世界に広めることである.
しかるに政府自民党は,この憲法の平和条項に違反してPKO協力法を成立させ,カンボジアへ自衛隊を派兵し,戦闘状態の中でついに日本人に犠牲を強いるに至った.彼らのもくろみは,さらに憲法を改定して条文に抵触することなしに軍隊を海外に派兵できるようにすることにある.
これは日本国の平和と民主主義にとって,戦後最大の危機であるといわざるをえない.われわれは日本科学者会議創立の精神を想起し,科学者の杜会的責任を果たすために,小選挙区制の導入と憲法の改悪に反対し,平和と民主主義を擁護し発展させるために最大限の努力をする決意である.
1993年5月30日
日本科学者会議第28回定期犬会