大会決議
アメリカの超伝導超大型粒子加速器(SSC)建設への巨額援助に反対し,日本の基礎科学基盤の優先的充実を求める(声明)
アメリカは国内プロジェクトである超伝導超大型粒子加速器(SSC=Super-conducting Super Collider)の総建設費82.5億ドル(約1兆1千億円)のうち,5〜10年間で約15億ドル(約2000億円)の資金協力を日本に求めてきた.ブッシュ大統領はこれを本年1月の日米首脳会談で日米関係改善の課題として迫り,宮沢首相は日米共同作業部会を作って協力することを約束した.そして,同部会は4月に開かれ,7月に次回が予定されている.外務省は年内に日本の態度を決定するとしている.
わが国がその経済力にふさわしい科学・技術の分野における国際協力をするのは当然のことであり,そのために,わが国の基礎研究の水準を高めることが必要である.しかし,長年の臨調行革路線による政策のために政府負担研究費の伸びは抑えられ,そのうえ特定のごく限られた研究分野と大規模プロジェクトに研究費が集中してきた.その結果,日本の基礎研究は全体としては施設,設備の遅れや研究費不足で窮地に陥り,基礎科学の広範な裾野が枯渇しつつあり,その改善こそが急務である.
SSC負担金を現在の学術研究予算とは「別枠」で確保するべきであるという意見もあるが,それは他の研究計画といちじるしくバランスを欠いたものとなり,日本の基礎科学がおかれている現状を改善するものではない.
もとより,科学・技術における国際協力のあり方は,日本学術会議の国際交流の原則(1961年10月27日,第34回総会)である「平和への貢献」,「全世界的な学術交流」,「対等の立場」,「成果の公開」に基づき,あくまでも日本の研究者の自主性が重視されるべきものである.このような巨大科学への参加についても全世界的観点を欠いた日米科学技術協力協定偏重となるべきではなく,政治的配慮によって研究者の自主的判断を歪めるようなことがあってはならない.
以上の観点から,われわれはアメリカの政治的圧力に応えた日本政府のSSC建設への巨額援助に反対するとともに,わが国の科学・技術関連予算を優先的に充実し,基礎科学の広範な裾野を潤すことを強く要求する.また,このような巨大科学のどのプロジェクトを採用するかにあたっては,日本の科学者の自主的判断によって日本学衛会議が公正に決めるべきであると考える.
1992年5月31日
日本科学者会議第27回定期大会