「PKO協力法案」に反対し,草の根からの運動を盛り上げよう
自民党は,前国会で継続審議となった「国際連合平和維持活動に対する協力に関する法案」(PKO協力法案)を公明・民社両党との「調整」により若干の修正をほどこして,今国会で成立させようとしている.本会はすでに,PKO協力法案に対し,昨年9月と12月の二度にわたり反対する声明を出したが.今回伝えられるPKFへの自衛隊参加の凍結と国会の事前承認という「再修正」によっても,自衛隊を鹿外へ派兵するという法案の本質は何ら変わらず,この法案に強く反対するものである.そもそも,われわれは.自衛隊そのものが日本国憲法違反の存在と考える.しかも,今回の法案は従来の「専守防衛」という政府見解をも踏み越え,自衛隊を国連への協力の名の下に世界各地の紛争地域に派遣し,武力が行使される危険も十分考えられるものである.さらに一般公務員・民間人も紛争地域に強制的に派遣されるおそれがある.このようなことが短期間の国会論議のみで決定されることを断じて容認することはできない.政府が直ちに同法案を撤回するよう要求する.
同時に,PKO協力法案推進勢力の言動は,わが国の平和と民主主義に関する今後の方向に,強い憂慮を感じさせる.日本国民は15年にわたる侵略戦争という痛苦の教訓の下に,再び戦争に加わらずに,世界平和の実現に積極的に貢献することを誓いあった筈である.そしてその思いが今日の日本国憲法にもりこまれたのであった.しかるに今回のPKO協力法案の提案・推進者は,歴史から目をそむけ.脆弁を弄し,前言をひるがえし,平然と憲法をふみにじる主張をしてはばからない.
このような状況を許すならば.日本国民が半世紀近くにわたって築き上げてきた我が国の平和と民主主義の基盤が根底からくつがえされざるを得ない.このことは断じて国際平和に貢献するものではない.わが国がまず行うべき貢献策は,かつての侵略戦争を心から反省してそれを償い,唯一の被爆国として核兵器の廃絶や軍事同盟の解消にみずから努力することであると考える.
われわれは今,日本の進路にとって重大な岐路に立っていることを認識し,日本の平和・民主勢力が,PKO協力法案の成立阻止のために力強く団結し闘うことを期待する.そのためにも本会は,すべての支部・分会・班において,声明,集会,デモ,抗議電報,その他のあらゆる可能な方法で同法案反対の運動を草の根から盛り上げることを決意するものである.
1992年5月31日
日本科学者会議第27回定期大会