今こそ核兵器全廃の世論を
去る9月27日のブッシュ米大統領の核軍縮声明をうけて,10月5日にはゴルバチョフソ連大統領が核兵器の大幅な削減構想を発表した.今回の両国が示した構想は世界各地,各水域に配備している戦術核兵器のすべてを撤収し,あるいは廃棄するという点でかつてない大規模なものである.創立当初から核兵器の即時全廃を要求して奮闘してきた日本科学者会議にとって,遅きに過ぎるとはいえこの事態はおおいに歓迎すべきものである.
しかし,同時にわれわれは,ブッシュ発言では依然として核兵器の存在そのものは抑止力として必要とみなし,またゴルバチョフ発言も1986年に米ソ両国が宜言した核兵器全廃に言及はしたものの,依然部分的削減にとどまっていることに,強い不満と危惧の念を抱かざるをえない.1984年にソ連首脳は核兵器廃絶が人類にとって死活的に重要な緊急課題であることを認め,またゴルバチョフ大統領も20世紀中に核兵器を全廃することを全世界によびかけている.レーガン米大統領もかつて日本の国会における演説で,核兵器の全廃を提案している.これらの歴史的事実とてらすと,今回の両大統領発言はいまだ不十分なものといわざるを得ない.両国が全核兵器を即時に全廃しないかぎり,全世界50億人類の核兵器廃絶の悲願は到底達成できない.
われわれは,米ソ両国首脳に対しては,すみやかに戦略核兵器を含むすべての核兵器の廃棄を,日本政府にはそのための積極的な役割を果たすよう要求する.
われわれはまた,平和を愛する世界の人びと,とりわけ世界で唯−の被爆国民である日本中の人びとに,さらに大きく強く世論を結集して米ソ両国を含むすべての核保有国に核兵器全廃を要求するようよびかける.
われわれは,核兵器廃絶のキャンペーンの場として,来る10月24〜27日に予定されている原水爆禁止世界大会がよびかけた第5の「平和の波」行動を成功させるために全力をあげるとともに,世界中でこの行動が成功するよう訴えるものである.この行動は,核兵器廃絶のための署名行動(ヒロシマ・ナガサキからのアピール)を共通課題とした創意ある国際共同行動であり,その成功は必ずや世界の人びとの世論を燃え立たせるに違いない.
まさにわれわれは,歴史的な大事業である核兵器廃絶にむけて世界中の世論を結集し,この大事業を現実のものとし得る好機を迎えている.
今こそ,そのために全力をあげるよう広く訴えるものである.
1991年10月18日
日本科学者会議