JSA

  声明

 「湾岸戦争」は世界中が憂慮していたように泥沼化しつつある.一方ではハイテク兵器を誇示し無差別の壊滅作戦や核施設への意図的攻撃などが行われ,他方ではペルシャ湾の大規模汚染による自然破壊が行われたり,世界各地でテロ活動が頻発するなど,「正義」とはまったく無縁の状態が展開されている.また日本政府はアメリカに追従し,みずから好戦的な姿勢を示し,90億ドルの戦争資金援助や自衛隊機派遺など自国の憲法を公然と踏みにじろうとしている.
 われわれは,昨年8月2日のイラクによるクウェート侵攻以来.その蛮行を厳しく糾弾し,即時無条件に撤退することを求めてきた.また同時に,アメリカが世界の憲兵役を演じ,武力を行使しようとする動きや,日本政府のそれへの加担に対しても強く反対してきた.そもそも人類は,今世紀の二度にわたる世界戦争を通じて,国際紛争の武力による解決がいかに愚かな選択であるかを学んだはずである.そのことを教訓として今日の国連憲章はつくられ,日本国憲法がつくられたのである.しかし今また,その愚行がくり返され,世界中に悪影響を及ばしつつある.
 したがってわれわれは,問題の出発点がイラクのクウェート侵攻という,今日の国際政治では断じて許されない蛮行にあったことを再確認しつつも,今日の「湾岸戦争」の即時,無条件停止を強く訴えるものである.まずは停戦により問題の平和的解決の条件をつくり,改めて多国籍軍とイラク軍の双方に撤退を求めるものである.またそのうえで,中東がかかえる歴史的な諸問題にメスを入れることを主張する.
 またわれわれは,いかなる場合にも,核兵器や化学兵器などの残虐兵器が使用されることに反対する.核兵器の被害をみずから体験した国民として,再ぴそのようなことがくり返されることを断じて許すわけにいかない.だからこそまた日本は,「湾岸戦争」の即時停止と,問題の平和的解決のために先頭にたち,国際的貢献を果たすぺきであることを訴える.そしてわれわれ自身も,世界の平和と人類の進歩を追求する科学者として,全力をあげてそのための努力をすることを,改めて表明するものである.
  1991年2月11目
              日本科学者会議