声明
イラクの国連憲章を無視したクウェート侵攻に始まった湾岸危機は,われわれが危惧した武力行使容認の国連安保理決蔑678を挺子とする,アメリカを中心とした多国籍軍のクウェート,イラクヘの大規模な爆撃により湾岸戦争へと突入した.戦前のアメリカによる宣伝とは違って戦争は長期化の様相を見せ始め,「国際紛争を武力で解決しようとすることは多大な人的被害と自然環境破鏡へと導き全世界に大きな混乱をもたらす」(1/16日本科学者会議の声明)とした危惧は現実のものとなりつつある.改めて,イラク,アメリカを中心とする当事国に強く抗議するものである.
日本政府は独自の平和解決へむけての努力を放棄し,戦争開始にともない多国籍軍の軍事行動への「断固支持」を表明するなど,アメリカに無条件に追随して,さまざまな戦争協力をなしつつある.「難民救済」を口実にして,われわれの住む愛知の小牧基地から自衛隊のC130H輸送機を要員もろとも派遣することは,アメリカを中心とする多国籍軍への直接・間接の協力という点で自術隊の海外派兵そのものであり明らかな憲法違反の行為である.その根拠を閣議決定の特例政令に求めることは,民主主義および法治主義の原則を踏みにじるものである.このことはまた,昨年秋「国連平和協力法案」を拒否した国民の意志を踏みにじることであり,既成事実を積み重ねによって,なし崩し的に国民が戦争にひきずりこまれた15年戦争の重い教訓を想起させずにはおかない.また,90億ドルを手始めとする戦費負担の追加は早晩,一方では増税という形で国民生活を,他方では歳費削減を通じてわれわれの科学活動を支える研究費を圧迫するであろう.
われわれは,日本政府に平和に逆行する自衛隊機海外派遣・90億ドルの戦費負担を止めて,平和憲法の精神にそって紛争の平和的解決のために最大限の努力をすることを要求する.
われわれ愛知の科学者は戦争の停止と平和解決へむけた国際・国内世論の結集のために努力するものである.
1991年1月26日
日本科学者会議愛知支部常任幹事会