天皇制批判の封殺をめざす右翼勢力の暴力行為を糾弾し,国民主権と政教分離をまもるための奮闘を誓う声明
私たちは,一昨年の昭和天皇病気以来の自民党政府の主導とマスコミの追随による天皇美化・元首化キャンペーンに反対し,日本国憲法の国民主権・政教分離の原則の擁護を国民に訴える諸活動をしてきました.今年1月以来は,自民党政府が実施を決定した「即位の礼」「大嘗祭」について,それらの天皇儀式が天皇の元首化・神格化をめざすことを批判し,今国会にあたってもさきほど,全国各地,各分野の280団体とともに,「大嘗祭」への国費支出と公務員参加を中止するよう政府・国会諸党に要請しました.さらにその後賛同を得た合計427団体によって再度政府・国会への要請を行おうとしていた矢先,フェリス女学院大学学長弓削達氏への右翼勢力による銃撃の報を聞きました.
弓削達氏は,自民党政府が予定した「即位の礼」関係の諸行事は憲法上疑義があり,ことに「大嘗祭」は「神権天皇制に逆行させる途を開くおそれがある」として反対の声明を発したキリスト教系4大学学長の一人であります.私たちは,今回の同氏に対する右翼の銃撃は,天皇の元首化・神格化に反対する私たちの一人ひとりにも向けられたものであることを痛感し,幸い銃弾がそれて同氏が無事であったことを喜ぶとともに,自分と異なる思想の銃弾による抹殺を図った右翼の凶行に対して満身の怒りをもって糾弾するものです.私たちはいかなる暴力にも屈することなく,さらに声を大にして天皇美化・元首化・神格化の動きに反対し,基本的人権をまもり日本国憲法の国民主権と政教分離の原則をまもるため奮闘することを誓います.
右翼は昭和天皇への服喪を終えた直後には,昭和天皇の戦争責任を論じた本島長崎市長を銃撃し,今回は「即位の礼」「大嘗祭」の方式を批判した弓削達学長の射殺を図りました.右翼は従来から威圧的な宣伝車の行進によって民主団体の集会を妨害し,わが国のアジア侵略の事実を論じる学者に脅迫状を送るなど,言論・結社の自由を暴力によって抑圧してきましたが,最近では天皇制批判者の射殺まで図るに至ったのです.白民党や多くの自治体,企業はこれら右翼の行動を非難することなく,右翼への資金援助を行ったり,民主的集会への会場使用拒否を行って右翼を激励さえしてきました.自民党政府が法的根拠のない「君が代」「日の丸」を教育の場に強制することや戦前さながらの方式による「即位の礼」「大嘗祭」を強行しようとしていること自体が,右翼の国家神道・天皇神格復活の要求に迎合し,その暴行を奨励するものです.その責任は誠に重大です.
私たちは自民党政府に対して,今回の弓削達学長銃撃の犯人を早急に逮捕し,右翼の暴力行為を根絶するよう要求するとともに,右翼の暴力行為を容認し,奨励する政策を中止すること,とくに戦前さながらの方式による「即位の礼」「大嘗祭」の実施を取り止めるよう重ねて要求します.
1990年5月2日
「現代の天皇問題を問う集い」関係9団体
日本科学者会議,日本科学者会議東京支部,日本宗教者平和協議会,日本高等学校教職員組合,全国大学高専教職員組合,日本私立大学教職員組合連合,東京都教職員組合,平和遺族会,東京文化団体連絡会議,〔協力〕日本マスコミ文化情報労組会議
連絡先:101千代田区内神田2−12−14束京労演内
文化団体連絡会議 Te1 256−4651