JSA

アッピール
教育基本法「改正」法案の廃案を求めるアピール
       2006年10月 日本科学者会議宮城支部

 政府はこの臨時国会で、さきの通常国会で継続審議になった教育基本法「改正」法案を成立させようとしています。通常国会で明らかになったように、この法案には基本的な問題があり、私たちはこの法案の廃案を求めるものです。

 教育基本法「改正」法案には重要な点がなくなっています
平和的な国家を建設しようという日本国憲法の理想がなくなっている
 現行教育基本法の前文は、「われらは、さきに、日本国憲法を確定し」ではじまり、平和的な国家を建設しようという日本国憲法の理想を実現するのが教育の根本の目的であることを謳っています。しかし、「改正」法案ではその点が削除されています。第一条でも、現行法の「平和的な国家」が、「改正」法案では「平和で民主的な国家」に変えられ、教育の目的が「平和的な国家」の担い手である主権者の育成にあることがすてられています。
教育の権利がなくなっている
 現行教育基本法には、日本国憲法で保障された国民の教育の権利が、前文と条文で具体的に示されています。しかし、「改正」法案では国民の権利が国家の権利に衣替えしています。現行法第十条では、教育は、「国民全体に対し直接に責任を負って行なわれるべきもの」ですが、「改正」法案では、教育は、「この法律及び他の法律の定めるところにより行なわれるべきもの」に変えられ、また、教員が「全体の奉仕者」であることも削除されています。

教育基本法「改正」法案には重大な点がくわわっています
国家が道徳を強制できる点がくわわっている
 現行教育基本法では、日本国憲法の精神に則り、個人の尊厳と思想・良心・内心の自由を守ることが尊重され、国家が道徳を強制することを禁止しています。また、「真理と平和を希求する人間の育成を期するとともに、普遍的にしてしかも個性ゆたかな文化の創造をめざす教育」が目標となっています。しかし、「改正」法案では、「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛する」ことが教育の目標として強制されます
国家が教育内容を強制できる点がくわわっている
 現行教育基本法では、教育行政は教育の目的を遂行するために必要な条件整備の仕事に限定され、教育行政が教育の内容に介入することを禁止しています。しかし、「改正」法案では、教育振興基本計画の策定を政府の義務とし、国家が教育内容を強制する仕組みが導入されています。また、大学の条文は、学問の自由と大学の自治を侵害するものです。そして、本来の条件整備の仕事は、地方公共団体の役割分担として国家の責任を放棄しています。

 私たちは教育基本法「改正」法案の廃案を要求します
 現行の教育基本法には、日本国憲法と一体不可分の準憲法的な法律であることが明示されています。一方、「改正」法案には、改正の正当性を根拠づける理由がないことが前国会で明らかにされました。「日の丸・君が代」強制を違憲・違法と認定した東京地裁判決は、「改正」法案をも断罪するものです。私たちは、現行教育基本法の維持を求めると同時に、「改正」法案の廃案を強く要求するものです。