JSA

特別決議
   教育基本法改悪に反対する

 教育基本法の「改正」案が4月28日閣議決定され、国会に提出された。そして、5月11日には、衆議院において自民・公明両党の賛成多数により、特別委員会の設置が決議された。16日には法案の趣旨説明と質疑が衆議院本会議で行われ、引き続き衆院教育基本法特別委員会でも法案の趣旨説明が行われた。政府・与党は、国民の批判を封じるために、国政選挙のない今国会の会期中に、教育基本法「改正」法案を強行成立させようとしており、予断を許さない事態になっている。
 マスコミにも非公開の「与党・教育基本法改正に関する検討会」において密室審議を進め、会期が6月18日までの残り1カ月あまりの時点で法案を提出し、国会審議の状況が国民に十分に理解されないようにして、短期間に「改正」法案を成立させようとする政府・与党のやり方は、議会制民主主義に対する重大な挑戦である。
 教育基本法は、戦前の教育への反省と、ファシズム国家日本の民主的再生を求める国際社会の世論とを背景に制定され、教育に関する諸法令の根本をなし、憲法とつなぐ準憲法的な性格を持っている。政府の「改正」案では、第2条で「教育の目標」を新たに掲げ、「公共の精神に基づき、主体的に社会の形成に参画し、その発展に寄与する態度を養うこと」「伝統と文化を尊重し、それらをはぐくんできた我が国と郷土を愛するとともに、他国を尊重し、国際社会の平和と発展に寄与する態度を養うこと」などの20に及ぶ「徳目」を列挙し、その目標の達成を義務づけようとしている。このような改定によって憲法19条の保障する思想・良心・内心の自由が侵害されることは明らかである。さらに、現教育基本法の第10条の「教育は不当な支配に服することなく、国民全体に対し直接責任を負って行われるべきものである。」が「教育は不当な支配に服することなく、この法律及び他の法律の定めるところにより行われるべきものであり、・・・」に変えられ、また「改正」案の第17条では「教育振興基本計画」を政府が定めるとされており、政府による教育内容への介入・支配に道を開くものとなっている。この「改正」案は、子どもたち一人ひとりの「人格の完成」をめざす教育を、政府主導で「国策に従う人間」をつくる教育へと転換させようとするものである。
 自民党のホームページには、教育基本法改定の必要理由として、「深刻な教育荒廃に対応」という見出しが掲げられ、その内容として、「社会状況は大きく変化」「時代に適合しきれていない面」「自信喪失とモラル低下」「青少年による凶悪犯罪の増加」「学力の問題が懸念」「いじめ、不登校、学級崩壊など深刻な危機」が挙げられており、これらに対応するため「教育の根本にさかのぼった改革が求められている」としている。しかし、このような教育の荒廃を招いた責任は、現教育基本法の精神を遵守しなかった自民党政権の失政によるものであり、そのつけを教育基本法改定に求めることは、本末の転倒であるといわなければならない。また、このような政府・与党のやり方は、憲法改悪の策動と連動しており、日本が戦争に踏み出そうとしている動向と一体のものである。
 以上の理由により、われわれは、教育基本法の改悪に強く反対し、「改正」法案の欺瞞性と危険性を広く国民に訴えるために努力することを決議する。

2006年5月20日    日本科学者会議京都支部 第40回定期大会