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核保有国は核兵器廃絶の「確かな約束」を実行せよ

2005年4月17日
日本科学者会議


 2005年5月に核拡散防止条約(NPT)第7回再検討会議が始まるが、現在のところ、核兵器廃絶への確かな前進の兆しが見えない。2000年の第6回再検討会議では、期限の明示はなかったにせよ、核保有5ヵ国を含め核兵器全廃に関する「確かな約束」が合意され、世界の人々に人類の進歩を予感させた。それにもかかわらず、その後、核保有国が、この「約束」に基づいて次のステップに踏み出す提案をまったく行わないことは、世界の人々の期待に対する裏切りである。
 2004年の国連総会においては、例年通り、非同盟諸国や新アジェンダ連合諸国から核兵器廃絶に関する積極的な決議案が提出され、前年をさらに上回る圧倒的多数の国々が核兵器の早急な廃絶を求めた。新アジェンダ連合提案の決議案には、中国の賛成があり、またNATO加盟国の中からもカナダ、ドイツ、ベルギーなど8ヵ国が賛成し注目された。しかし、こうした世界の声を受ける形での、核保有国のイニシアチブによる核兵器廃絶の提案は見あたらなかった。
 一方現在、北朝鮮の核兵器問題が6ヵ国協議の場で論じられているが、そこには「核保有国」が3ヵ国も参加しながら、ひたすら核兵器の拡散のみを問題にし、自らの核兵器について廃絶を決意する発言が見られないのは残念である。核保有国が自ら2000年決議の実行計画を示すことこそが、「核兵器の拡散問題」を解決する道である。またこの中で、唯一の被爆国である日本の政府が核兵器廃絶へのイニシアチブを発揮しようとしないことは、無責任である。
 アメリカが核兵器の新たな開発・使用を計画していることは決して許されない。もともと核兵器は、国連第1号決議で否定されている。新たな核兵器開発は、世界平和に敵対する行為である。こうしたアメリカの行動を非核国だけでなく、核保有国が毅然として批判することが、アメリカに核兵器先制使用戦略を諦めさせ、核兵器を廃絶することにつながる。
 いま非核(兵器)地帯条約加盟国が増えつつある。中南米、南太平洋、東南アジア、アフリカに続いて、今年3月には中央アジア諸国がこれに参加し、中東でもその方向が世論となりつつある。現在の核保有国は、こうした世界の声に耳を傾け、自分たちだけは核兵器を持ってよいとする不平等な論理を放棄し、核兵器の廃絶に努力するべきである。
 人類の生存と平和的繁栄のために科学の成果を活かすことを目的に活動している日本科学者会議は、科学の成果の悪用であり人類を破滅へと導く核兵器を絶対に認めない。日本科学者会議は、21世紀最初のNPT再検討会議を、核保有国が自ら合意した「確かな約束」を実行し、人類の進歩を示す「核兵器廃絶宣言」の場にするよう要求する。