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第27回瀬戸内シンポジウム広島宣言



「9.11テロ」の惨劇以来の国際情勢は「平和の危機」ともいえる事態が続き、「イラク戦争」が開始され2年にもなるが、現地では未だに殺戮が繰り返されている。日本の自衛隊も撤退を求める世論に背き居座り続けている。日本国憲法を改悪する動きが強まっているものの、これに反対する「9条の会」の急速な広がりがあることが注目される。このように、「平和なくしては何事も始まらない」というのが実感される。
しかし、ここ広島では本年被爆60周年を迎え、非核港「神戸方式」がとられて30周年、やがてNPT(核不拡散条約)再検討会議を迎えるという節目のときに、本シンポジウムが開催されたことの意義をまずは確認しておきたい。すなわち、21世紀を字義通り「環境の世紀」とするためには、その最大の障害である戦争をたくらむものとのたたかいをおろそかにはできないのである。
世界遺産にも匹敵する多島海美を誇る瀬戸内地域では、昨年瀬戸内法施行30周年、瀬戸内海国立公園指定70周年を迎え、さらに、本年2月には気候変動枠組み条約京都議定書が法的文書として発効したのは画期的な出来事である。私たちは、これをきっかけに、停滞しがちな環境保全の取組みを一段と強め、前回の大阪シンポで掲げられた「永続可能な社会」をつくり出すために、英知を傾けた研究活動、住民運動の発展に努めなければならない。
この第27回シンポジウムでは、「瀬戸内海の『自然再生』と原風景の保全」というメイン・テーマのもとで、活発な報告と討論が行われた。瀬戸内海では、高度成長期以来の汚染の付けが未だ回復されていない上に、新たな重金属汚染や生物生産の阻害要因が明らかにされた。また、財政的にも立ち行かないと指摘されている関空2期工事、神戸空港などの大規模埋立公共事業が進められていることは極めて遺憾というほかない。真に「自然再生」をいうのであれば、これらの大規模公共事業のあり方を抜本的に見直すことから始めなければならない。
本シンポジウムでは、アサリなどの水産資源の復活への努力や見通しも報告された。瀬戸内海の生態系を守るためには、「環境創造」などではなく、行政による「規制型保全」の強化こそ肝要ということが改めて確認された。瀬戸内海での海砂採取については、一部を除いてほぼ全面的な禁止措置が採られる見通しが生まれたことは特筆すべきことである。瀬戸内法では、瀬戸内海及びその周辺の優れた景観を保全することが立法趣旨に含まれている。それに加えて、本年景観法が全面施行されることになった。
私たちは、この瀬戸内法及び景観法などを十分に活かし、それらの内容をさらに拡充強化し、瀬戸内海のかけがえのない環境とその原風景の価値を再認識して、これを後世に継承すべくその保全と形成の取組みを進めるなど、なおいっそうの努力を重ねることを宣言する。


 2005年3月27日
第27回瀬戸内シンポジウム