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☆ 日本科学者会議は、10月2日に下記の声明を発表、アメリカ合衆国大統領、小泉首相、川口外相、国連事務総長宛に送付しました。


米英両国のイラク攻撃に強く反対し、国連を通じての平和的解決を求める(声明)

 ブッシュ政権が今年1月にイラン、北朝鮮とともに「悪の枢軸」と位置づけたイラクに対して、米国は先制攻撃(核を含むこともあり得る)を実行しようとしています。米国防総省は綿密なイラク攻撃計画を策定し、ブッシュ政権は連邦議会に「武力行使容認」決議案を提出しました。すでにクウェートなど周辺各国には米軍が大規模に展開されており、クルド人が支配するイラク北部では米諜報機関要員による活動が開始されています。
ブッシュ米大統領は、9月に行った国連演説の中で、イラク攻撃を正当化する理由として次の2点をあげています。
1.イラクが昨年9月11日の同時多発テロ事件の実行犯とされたアルカイダなどテロリスト・グループなどと密接に関わり、それを支援・協力した疑いが濃厚であること。
2.イラクが湾岸戦争後に査察実施などを求めた国連決議を再三にわたって破り、大量破壊兵器(核兵器、生物・化学兵器など)を秘密裏に開発・保有している可能性があること。
しかし、これらの理由はいずれも米国の推測に基づく「潜在的可能性(疑い)」の存在を指摘しているだけで、確たる根拠は示されていません。明確に言えることは、こうした問題は現地での実際の「査察」抜きに正確な立証ができないということです。
この国連による査察実施については、ブッシュ大統領の国連演説の後、イラクがそれまでの方針を変えて無条件の受入れを表明しました。しかし、米国はそれをイラクの「時間稼ぎ」として受け付けず、「武力行使容認」につながる新たな国連決議に固執し、もしそれが受け入れられない場合は米国による単独軍事行動も辞さないという構えを見せています。ここには、問題の本質は査察を受け入れるかどうかではなくイラクの脅威そのものであるとして、何としても「フセイン政権の打倒」をはかろうとする米国の本音があらわれています。
米国単独や米英両国によるイラク攻撃は国連憲章51条が否定する「先制攻撃」にあたり、主権国家に対する「侵略行為」、国際法違反であることは明白です。国連が米国の意図する形で「武力行使容認決議」を採択するならば、それは「国連の自殺」、すなわち国連の存在意義の喪失にほかなりません。アナン国連事務総長には責任ある主体的な対応を期待します。
湾岸戦争後のイラクでは、米英両国が国連の枠外で設定した「飛行禁止空域」違反を理由にこれまで繰り返してきた空爆や、湾岸戦争時に使用された劣化ウラン弾の後遺症、湾岸戦争後にイラクに対して一方的に課されて今日まで続く厳しい経済制裁の影響などですでに子ども、老人、女性を中心に100万人にものぼる人々が犠牲になっているといわれています。
このような状況下のイラク国民に対してさらなる惨禍を強いることになる、米国単独や米英両国によるイラクに対するいかなる攻撃に対しても、私たちは強く反対し、国連を通じての問題の平和的解決を求めます。 
また、日本の小泉首相は、シュレーダー、シラク独仏両首脳などが反対するなかで、米英両国のイラク攻撃に明確な反対の姿勢を示さないばかりか、「備えあれば憂いなし」と唱えて本格的な有事体制の導入を意図しています。私たちは、小泉首相に対し、その「戦争協力」の姿勢を直ちに撤回して、日本国憲法に基づく国際紛争の平和的解決への努力を行うことを強く求めます。
2002年10月2日
日 本 科 学 者 会 議