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香川県土庄町豊島における産業廃棄物不法投棄事件の早期解決を求める決議


 廃棄物処理,とりわけけ産業廃棄物処理の問題は今日極めて大きな社会問題となっていますが,豊島における産業廃棄物の不法投棄事件はその最も象徴的なものとし全国の関心を集めています.科学の総合的発展とその成果の国民への普及をめざしている私たち日本科学者会議は,豊島における事件に深い関心を待っています.
 現在豊島には50万トンを越える廃棄物が放置されたままとなっており,住民らにより撤去を求める公害調停の申請がなされています.今日の状態に至るまでに住民らに非は無く,全く正当な要求であるだけでなく,住民らは20年来不法な投棄の防止に努めてきました.
 調停の過程において実態調査が実施され,廃棄物の有害性や土壌・地下水などの汚染が確認され,周辺海域汚染の危険性が極めて高いことから「このような処分地の現状及びその評価に鑑みると,処分地をこのまま放置することは生活環境保全上の支障を及ぼすおそれがあるので早急に対策が講じられるべきである」とする結論が示されています.
 いうまでもなく,廃棄物の処理は原因者の責任においてその処理を行うことが廃棄物処理法の理念であり,万が一不法処理がなされ原因者によって改善がなされない場合でも行政代執行法の適用による対処が行なわれ,この2法によって廃棄物処理は万全であるとされています.
 したがって原因者負担の原則に基づいて.産業廃棄物の処理事業者・排出企業及びその許認可権・監督責任を有する香川県などによって早急な対策が講じられなければなりません.これができなければ,豊島の環境汚染の進行と住民の生活破壊は一刻の猶予もならない状況になります.一度海域に拡散した汚染を除去することは極めて困難であり,何としても未然に防がねばなりません.住民の生活と健康を守るため,また瀬戸内海汚染を防ぐためにも,早急に原状回復がなされるよう公害等調停委員会が努力され,産業廃棄物処理のあり方を示されるよう要望いたします.
1996年5月26日
                  日本科学者会議第31回定期大会