小選挙区制導入に強く反対し,企業・団体献金禁止と衆議院の定数抜本是正を求める(声明)

 今,日本の平和と民主主義は重大な岐路に立っている.
 「東京佐川急便事件」と「金丸・生原巨額脱税事件」は,政界の金権・腐敗ぶりの一端を明らかにした.今国会で行なうべき政治改革は,この金権腐敗の実態を徹底的に明らかにし,その一掃をはかる具体策として,企業・団体献金の禁止など根本的方策を講ずることである.このことこそ,多くの国民の要求にほかならない.
 しかるに,白民党は,こうした方策を講ずるどころか,金権腐敗の根絶の問題を選挙制度の問題にすり替え,鳩山内閣以来の野望である小選挙区制の導入を実現しようとしている.しかも,企業・団体献金枠の倍加や,総額309億円の政党国庫助成までもくろむという厚かましさである.そしてこの小選挙区制によって,政府自民党が憲法改悪を強行しようとしていることは明らかである.
 私たちは,1990年5月の第25回定期大会において,小選挙区制や政党法の導入が我が国における国民の基本的権利,ひいては人類の進歩と平和のためにも重大な危機をもたらすものととらえて,反対の決議をあげた.そして,1991年6月には,海部内閣の小選挙区制導入の動きとともに,野党のなかに見られる「併用制」容認論を批判したが,今回公明・社会両党がこれを提案するに至ったのは,我々の指摘の通り白民党の小選挙区制導入に手をかすものであり,まことに遺憾と言わざるをえない.そして今,国会の内外では,与野党の提出法案を擦りあわせ,「合意」を得ることが模索されている.その「合意」とは,結局,「死票」を大量にうみだす非民主的な選挙制度である小選挙区制の導入にほかならない.
 私たちは,議会制民主主義の根幹を危うくする小選挙区制の導入に強く反対し,国会が企業・団体献金の禁止など政治資金の規制の問題を中心課題として取り組むこと,そして,1986年に国会が白ら決議した中選挙区制の下での定数是正を直ちに実行することを要求し,ここに声明する.
                 1993年5月5日
                 日本科学者会議